2026年10月9日
今週は、イマーシブオーディオ関連のソフトウェア2本と、現場で役立つセミナー情報、そして少し毛色の変わった音響ネタをお届けします。今週取り上げたのは、次の4本です。
- d&b audiotechnik、新しいSoundscape処理ソフト「vCore」発表
- Waves、TRACT System Calibrationスイートを拡張
- イースペック「機材塾」でSPAT Revolutionのセミナー開催
- ヒビノグループ、音響透過型・高精細LEDディスプレイを開発
d&b audiotechnik、新しいSoundscape処理ソフト「vCore」発表
d&b audiotechnikが、スタンドアロンのSoundscape処理ソフトウェア「vCore」を発表しました。無料で利用できるソフトウェアです。これまでSoundscapeの仕込みには、専用の物理処理エンジンが必要でした。
vCoreは、Create.Controlソフトウェアとヘッドホンだけで、イマーシブオーディオの制作と試聴ができる新しい方法です。最大64入力に対応し、2チャンネルのバイノーラル出力を、ヘッドホンだけでなくウェビナーや配信でも扱えます。macOS、Windowsの両方に対応し、DAWから直接音声をルーティングできる「AudioBridge」も組み込まれています。

私の見方
物理的な処理エンジンを必要とせずにバイノーラルプロジェクトを作成できるので、ヘッドホンを使った没入型体験イベントや、テーマパークでの活用に可能性が広がると感じます。
元記事:d&b audiotechnik Unveils New vCore For Soundscape Preproduction
Waves、TRACT System Calibrationスイートを拡張
Waves Audioが、TRACT System Calibrationスイートを拡張しました。

新たに「TRACT Measure」と「TRACT SPL」の2つのプラグインが加わり、既存のTRACT System Calibrationと合わせて3本構成になりました。PAの測定、システムのキャリブレーション、本番中のSPLモニタリングを、ひとつのワークフローでこなせます。

LV1ライブミキサー、またはSuperRack環境の中で、測定からタイムアライメント、補正、SPL監視まで完結します。

あわせて、eMotion LV1のv17アップデートも行われました。永久購入のほか、Live PlusやMercuryなど複数のWavesバンドル、Waves Ultimateのサブスクリプションにも含まれます。

私の見方
仕込み時間の短縮と、本番中のSPL監視は、今のライブサウンドの現場で求められる条件に入っています。システム測定からタイムアライメント、補正、SPL監視までの一連のアプローチを、LV1かSuperRackの中で完結できるのは、エンジニアにとって強力なツールになりそうです。
元記事:Waves expands Tract System Calibration
イースペック「機材塾」でSPAT Revolutionのセミナー開催
イースペック株式会社が、「機材塾」の第161回として、「SPAT Revolutionのアップデートによる新たなアプローチ」と題したセミナーを開催します。開催日時は、2026年10月21日水曜日、13時30分からです。

オブジェクトベースのイマーシブミキシングツール、SPAT Revolutionの最新アップデートで追加・強化された機能と、それを使った演出・制御のアプローチを、実例を交えて解説する内容です。オンライン開催で、ZOOMでの参加には事前のアカウント登録が必要です。参加人数は500名までです。
事前の質問は10月14日まで受け付けています。

私の見方
イースペックの機材塾は、毎回現場で役立つセミナーを開催していて、私も許す限り毎回受講しています。ライブイマーシブの現場での活用が期待できるSPAT Revolutionは、私も利用中ですが、まだ使いこなせているとは言えません。今回も、早速参加を申し込みました。
アップデートでどう変わったのか、使い勝手はどうか、セミナーが待ち遠しいです。
元記事:SPAT Revolutionのアップデートによる新たなアプローチ
ヒビノグループ、音響透過型・高精細LEDディスプレイを開発
2025年の大阪・関西万博、大阪ヘルスケアパビリオンの「XD HALL」で、カプコンの体験型コンテンツ「モンスターハンター ブリッジ」が展開されました。360度の映像と、連動する立体音響、床振動が融合した、没入体験です。この音響・映像・床振動システムの設計施工を担当したのが、ヒビノグループです。

360度映像を支えたのが、ヒビノグループが1年以上かけて独自開発した、音響透過型・高精細LEDディスプレイ「ChromaVision025」です。体験エリアは、高さ4.8メートル、内周37.76メートルの円柱状で、側面と天面をLEDディスプレイで構成し、床面はプロジェクターで投影しています。縦横ともに2.5ミリピッチという高精細さと、背面に置いたスピーカーの音をできるだけ損なわずに透過させる構造を、両立させています。
LED素子の間に透過穴を設けつつ、強度や配線の確保も必要で、開発には音響の知見も取り入れたとのことです。ヒビノグループの日本音響エンジニアリングの研究所で、音響挿入損失や吸音率などの計測試験を実施した結果、体験価値を損なうような音質の劣化や、フラッターエコーによる悪影響は無視できるレベルとわかり、量産に進みました。完成したLEDディスプレイを円柱状に組み上げる施工も、技術的なハードルの高いものでした。
実際には完全な円ではなく、59枚のLEDパネルをわずかな角度でつないだ「59角形」です。60角形なら4分の1周ごとに90度になり、角度を確認しながら進められますが、59角形では途中のチェックポイントがなく、最後の1枚をはめ込むまで成功かどうかわかりません。しかも、隣り合うパネル同士の画素ピッチのズレは、図面上0.1ミリまでしか許されない精度です。
結果は、手戻りなしの一発成功だったそうです。開閉時に隙間ができやすい、厚さ約40センチの片開き扉も、目標の1センチ以下を上回る6から7ミリに収めています。ヒビノは今後、映画館のスクリーンを音響透過型LEDディスプレイに置き換えるなど、既存設備への応用も検討しているとのことです。

私の見方
私自身、2025年の万博では別のパビリオンに、仕込みから撤去まで7ヶ月ほど携わっていました。XD HALLは大変な人気で予約が取れず、残念ながら入場はできませんでした。見ることができなかっただけに、開発の裏側がどう進んだのか、興味深く読みました。
まとめ
イマーシブオーディオのソフトウェアが身近になる動きと、現場で学べるセミナー、そして映像と音響を融合させた特殊設備の開発の話をお届けしました。
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